「あれ?チカ。」
夏休み最終日。
いつものように先生と面接練習を終えるとちょうど教室でチカを見かけた。
「あ、ハヤタお疲れ!面接練習してたの?」
「いや、その辺でサボってた。」
「なにそれ。」
チカは少し分厚めの冊子を手にしていた。
「何読んでるの?」
「私が受ける学校のパンプレットだよ。」
隣に座り、パンプレットを見せて貰う。
「え・・・東京?
東京の学校を受けるの?」
表紙に書いてある学校の名前の先頭には“東京”という文字が書かれていた。
「そうだよ。だから高校卒業したら東京に行くんだ。」
「なんで・・?この辺にも看護の専門学校いっぱいあるじゃん。」
「私、今まで家族や友達に恵まれてここまで来たけど、いつまでも甘えてられないからさ。
高校卒業したら東京で、自分1人の力で頑張って、
立派な看護師になってまたこっちに戻ってこようと思ってるんだ。」
「そうか。お前は凄いな。」
「ありがと。」
「・・高校卒業したら会えなくなるんだな・・。」
「なになに~?
私と会えなくなるから寂しいの?」
「・・・・寂しくない。」
「そこは“寂しい”って言いなさいよ!」
「そのパンチがあったら東京でも十分やっていけそうだな!」



