「ちょっと、服ぐらい着なさい!」
この世に生まれた時の姿で、玄関に走る。
鞄を見ると、わずかにチャックが開いていた。
急いで帰ろうとしたからつい、図書室を出るときに最後まで閉めていなかったようだ。
まずい!!
チャックを全開にして中身を確認する。
今日貰ったプリント類がフニャフニャになっていたけど、そんなことはどうでもいい。
・・・・寒い!
一度風呂場へ戻り、部屋着を着て再び鞄に戻る。
「やっちまった・・・・。」
手に取った【兄弟の系譜】は無残な姿に変わり果てていた。
強く横殴りの激しい雨。わずかに開いた隙間。
水という天敵にさらされた紙に為す術は無かった。



