好きでいいかも……

 ロビーで待つジョンの元へ、カイトを抱いて向かう。


「え―。あの人? めっちゃカッコいいじゃん」

 有美が、声を上げた。


 有美の声に、ジョンは椅子から立ち上がり、こちらにニコリとほほ笑んだ。


「すみません。カイトがお世話になりました」

 ジョンは、晴香に握手を求めた。

 春香も、慣れた手つきで綺麗に握手をかわした。


「とんでもない、とても楽しかったです。それより、理紗の事をよろしくお願いしますね。こう見えて、繊細なところがあるので……」

 春香は、全てを悟っているかのような笑みを見せた。


「ちょ、ちょっと何言っているのよ」

 私は、晴香を睨んだ。


「はい。リサの事は大切にします」

 ジョンは、優しくも凛々しい目を、三人の私の友に向けた。

 まるで、ジョンが固く誓ったよに見えて、くすぐったい嬉しさが込み上げてきた。


「良かったね、リサ。また、詳しい事聞かせてよ」

 一歩後ろで見ていた佳代子の声が、胸の中に熱く落ちてきた。


「カイトくん、またね」

 晴香がカイトに手を振った。


「お姉さん、また、一緒に遊んでね」

 カイトは、私の腕からぱっと飛びおりると晴香に走りよりハグをした。

 そして、有美と佳代子にもハグをすると、私とジョンの間に戻ってきて、両方の手を繋いだ。



「おい、カイト。リサは仕事だぞ」


「ううん。偉いおじさんがね、僕と遊園地に行っていいて!」

 カイトは、手を繋いだままジャンプをして言った。

 
「ほんとに?」

 少し驚いたような顔で、ジョンは私を見た。


 私はコクリと肯く。


「まったく! リサに迷惑かけて」

 ジョンの口調はキツイが、顔はニコニコしている。


「いいんですよ。このチャンスをのがしたたら、リサは仕事人間のかわいくない女になってしまうので」

 春香が、すました顔でさらりとキツイ事を言う。


「余計な事を!」

 私が、晴香を睨むと、ロビーの後ろの方に、チラチラとこちらを見ながら歩いている、部長の姿が目に入った。

 私と目が合うと、慌ててエレベーターへと向かった。

 良く見ると、ロビーのあちこちに、同じ部署の人がいる。

 偶然か? いや、違うな?


「もう、行きましょう!」

 私は、くるりと向きを変え、カイトの手を繋ぎなおした。


「本当にありがとうございました。失礼します」

 ジョンも、クルリと向きを変えた。