恐る恐るジョンを見ると、優しい目が私を待っていた。


「ありがとう…… 僕の事を考えてくれて。ほんとうにごめん……」


「あっ……」

 私の目から、ポロリと涙が落ちた。

 安心して思った事を言えるって、こういう事なのかもしれない……


 私はずっと、自分の気持ちをぶつけたかったんだ。

 それでも、受け止めてもらえる、安心感が欲しかった……


 ジョンの大きな手が、私の頬に伸びてきて、指で涙を拭った。


「彼女には、はっきり言ったから、もう、心配はいらない」

 ジョンの言葉に、胸の中で黒い塊のように重かったものが、すっと消えていくようだった。



「私、人を好きになる事に自信が無くて…… ジョンの事だけじゃなくて、自分の気持ちからも逃げてばかりで……」


「僕だって自信があるわけじゃない。リサが日本に帰る事は分かっていたから、自分の物にしようと必死だった。僕は、リサの笑った顔が好きだ。カイトにだけじゃなく、僕にも向けられないかって、ずっと思ってた」

 ジョンは、少し頬を赤らめ私に優しくほほ笑んだ。


「そんな…… 私は、ジョンにそんな風に思ってもられる人間なのか自信がありません……」


「どうして?」


「私…… 実は一回結婚に失敗しているんです。だから…… ジョンに嫌われるような事してしまうかも……」


「リサ…… 悲しい思いをしたんだね…… でも、その分、人を大切に思える事ってない? 少なくとも僕はそうだ……」


「ジョン……」



「大丈夫…… そんな簡単にきらいになれたら、ここまで探しに来ないよ。少しは信じてくれる?」

 ジョンは少し困ったように私を見た。



「あの……」


「まだ、何か疑っている?」



「その、彼女さん、怒らせて大丈夫なんですか? 偉い人の娘さんなんですよね?」


 私は不安気にジョンを見た。