離婚したから、一人旅の優雅な時間を持てるようにもなったのだが……

 晴香を見ていると、数年前の自分を思い出す。

 幸いなのか、子供がいなかったかたので親権問題なども無く済んだが、ローンで買ったマンションの処理やら、相手の女性問題まで、調停で話し合う事になった。


 浮気したのも、金使いが荒くなったのも、お前のせいだと言い切る相手に、悔しさが込み上げた。

 こちらの非とされたのは、ケチだとか、家に誇りがあったなどだ……


 私からして言わせれば、高いブランドを身につけていないと、周りになめらるだとか、お前の態度が悪いから、女を作ったなど平気で自分を正当化する相手の方が、よっぽど非があると思うのだが……


 なんで、こんな人と結婚してしまったのかとういう後悔だけが残った……


 相手に問いただした時に、口にされたのが……

 「あの時は、愛していると思った……」

 という言葉だった……



 その時、人の気持ちなんて信じるものじゃないと強く思ってしまった。


 
 きっと、晴香も大変な思いを乗り越えた今、少しほっとしているのだろう……


 晴香に笑顔が戻り、私もほっとしていた。



「オーストラリア、楽しんできてね。変な男に引っかかっちゃだめよ」

 晴香が別れ際に、私に手を振って言った。


「ありがとう…… 心配しなくても、それは無いわ」



 そんな別れの言葉を交わした、私の心は、一人旅の興奮へと向かっていた。