ちらっと、時計を見る。


「22時……」


まだ榎本さんは来ていない。


今までの半年間、榎本さんが来ない日はなかった。


何かあったのだろうか。


それとも、先週後輩さんたちに出くわしたからもうこのお店には来ないとか…?



「沙夜華ちゃん、そろそろ上がりでいいぞー!」




「…店長」


「ん?」


「お店の閉店時間何時でしたっけ?」


「23時30分だけど…」


「今日私残ります!残業代要らないんで!」


「えぇ!でも帰りが危ないよ!」


「大丈夫です!洗い物手伝いますね!」


「さ、沙夜華ちゃん…、わかった。頼んだよ」


店長は察してくれたらしい。


私は笑顔で返事をして、洗い物に取りかかった。



今日、会いたい。


そうじゃないと、一生言えなくなってしまう気がしたから。