ズキッ……。

佐川さんの言葉が、胸に刺さった。

私も他の後輩さんたちと一緒だった。

見た目だけで、話もせずに怖いって思って、失礼な態度とっちゃった。

本当は、ずっと気になっていた。

この店に毎週来てくれる感謝も言いたかった。

でも言えなかったのは、単に自分に勇気がなかっただけ。


謝らないと。来週、謝ろう………。


そう決意して、榎本さんの座っていたところを片付けようと思ったときだった。


「…………忘れ物?」


榎本さんが座っていた隣の席に、黒い手袋。


榎本さんの忘れ物だろうか。


一瞬あの後輩さんたちに預けようと思ったが、手の甲の部分が少し穴が開いてるのを見て、やめた。


これを直して、来週渡せば、謝るきっかけを作れるかもしれない。


そう思って、私は手袋を大事に握りしめた。