二年半後

栗色の髪、ドングリのような琥珀色の目、生意気そうにツンとした鼻。男の子のように活発で、いつも草や泥まみれ。それに兎に角よく食べる。

サブリナは人見知りはあるものの、元気いっぱいに育ってくれていて、色々と私にそっくりな娘を、レイは目に入れても痛くないほど可愛がっています。

少し気掛かりなのは、発語が『おかしゃま(お母さま)』だけな事。

二歳半で一つだけというのは、明らかに遅いのです。

そんなある日、柔らかな日差しを浴びながら、親子三人庭で鬼ごっこをして遊んでいた時の事、鬼役のレイに抱き上げられたサブリナは突然、
「シャブリナ、おとしゃま(お父様)、しゅき(好き)」

まさかの三語文にビックリしている私をよそに、サブリナは、パパのほっぺにチュ&うふふっと天使のような微笑み。

レイは嬉しくて鼻血を出しました。

弧を描く鼻血なんて、見たの初めてです。
しかも貴公子然とした超イケメンがですよ!

かなり驚きましたが、それより唖然としたのは我が娘に対して。

好き、キス、笑顔って、そんな小技どこで覚えたーっ!? 
サブリナは、天性の小悪魔かも知れません!

その夜、寝室

「サブリナに片思いが通じて良かったわね、レイ」ふふふ

「僕が永遠に片思いしてるのは、君だよ」

後ろから私の腰を抱き、甘く色付いた声を耳に注ぎ込む夫。

まずい、今夜は寝かせて欲しい……。
嘘あくびをしながら、さり気無く腕から逃れようとしましたが、更に手に力がこもり逃がして貰えません。

「エセル、愛してるよ」

「私もだけど、だけど」眠い!

「僕の方が何倍も愛してるよ。証明してあげる」

毎晩証明してくれなくて良いから……、あ、手がもぞもぞしてるし……耳甘噛みし始めたぁぁ。

今夜は寝りたいんだって~。