実感がなかった。
だって身体は浮いてないし、足だってあるし、自分自身ならしっかり触れられる。
でもやっぱり…目の前にいるのは…

「ありさ!ありさぁああ!!!」
「姉ちゃん…」
「…。」
「おじいちゃんとおばあちゃんより先に死んでしまうなんてなぁ…。」

病室のベッドに横たわる自分とその周りで悲しむおばあちゃん、弟、お父さん、おじいちゃん。
やっぱり私死んじゃったんだ…。
全然実感がないからかもだけど、ベッドに横たわるもう一人の私を見ている自分は意外といつも通り呑気だった。
このあとってもう成仏すんのかな。
まって、自分のお葬式とか見ちゃう感じ?
いやその前に死神とか来ちゃって連れていかれるのかな…。
その時はこのあとの事でちょっとワクワクしてたんだよね。
でもこのまま成仏はしたくなかった。

だってまだやり残したこと沢山あったから。

死後の世界への興味で埋まった頭の中の隅っこには「先生」っていう2文字がやっぱりあったから。