「率直に言うと、今、ヨウ先輩は、春姫のところにいる。」


春姫、先輩……?

どうして…。


「…春姫先輩、病気持ちって知ってる?」


え。

あ、この前…
友達に聞いた気がする。



「病気持ちって言っても、そこまでひどくはないんだけど…人混みとか行くと頭痛くなってそれがひどくなると立てないくらいになるらしい。…だから、俺が春姫と付き合ってた時は空き教室の静かなとこにいってたんだけど。」


なるほど
納得…。


大樹は続ける。

「春姫から、LINEきてさ、今日。『頭痛い』って。もう別れたけど心配だし、『行こうか?』って聞いたら『ヨウがいてくれるから大丈夫』って、来たんだ…」


…っ。


じゃあいま、ヨウくんは春姫先輩の家で、

二人っきりで……!?


ああ、頭が痛い。

苦しい。


「俺もおかしいって思ったよ。ヨウ先輩、今日は琴羽とデートのはずなのに、って。で、俺は琴羽を探しに行った。待ち合わせに使えそうなとこを探してやっとこ見つけた…」


これが全部、と付け加えて大樹は

話し終えた。



幼馴染で元カノの美人さん。



ただの恋人の私。



どちらかを取るなら、

そうだよね。

春姫先輩だよね…。

しかも、

頭だって痛くて。



でも、でもね。

連絡くらい欲しかった。


もしかしたら、そんな状況じゃなくて、

連絡できなかったのかもしれないけど、

それならそれで、

春姫先輩づてに、いったりして欲しかった。


25日に埋め合わせしようって言って欲しかった。


ごめん、って。


ことだけだよ、って。


プレゼントありがとう、って。


言って欲しくて……。



一度溢れた涙は止まらなくて。


しゃくりあげるたびに、


胸がぎゅっと苦しくなって。


「琴羽───……」


大樹の腕が回ってきて、

私を優しく包んだ。


前のキスとは違う。


壊れ物を扱うかのような、

ガラスを割れないようにするような、

優しい抱きしめ方。



その優しさがまた、みにしみて。


「…っ、うぅ…っ」


私は声を漏らしながら泣いた。