来なかった。


怒ってるわけでも呆れてるわけでもない。


ただ、悲しい…だけ。


まだ待ってた方がいいのかなあ。


どうしたんだろう…。



そのとき──。

「琴羽っ」


聞きなれた声がして。


私は顔を上げた。



「あは、は…大樹、なにしてるの…?」


大樹、だった。


傘をもって、

急いできたのか息を切らしている。


「琴羽、帰ろう」


腕を引かれ、傘に入れられる。


大樹の体温があったかかった。



なにがあったのかな。


聞こうと思ったけど、

私はいまは、歩くのに精一杯で。


何も聞けなかった。


そのまま、私達は家に帰る。


ずっと無言だった。


涙なんて出なくて。



大樹が来る、ってことは、

ただの遅刻なんかじゃないってことはわかった。


家に着くと、


「俺んちで話、聞く…?」と、大樹。


「いや、だめだよな。電話にするか」


きっと、この前のキスのことを考えているんだろう。

部屋に行った時のこと。


大樹は大樹なりに、考えている。



「大丈夫、直接話聞かせて?」


いまは、一人でいたくない。


不安で押しつぶされそう。


「お前ん家でもいいか?」

大樹にそう言われ、

こくん、とうなづく。


家に入ると、

雪に濡れた私と大樹を見たお母さんが、

びっくりして、

タオルを持ってきてくれた。


あと、部屋にはあったかいココアと、

ストーブも。



着替えを済ませた私は、

ベッドの上に、座った。


大樹も、座った。


ココアがじんわりとしみて。


少しずつ、泣きそうになる私を、

大樹はティッシュで、

涙を掬った。



「いける?話していい?」

大樹の優しい表情。


「うん。」



ねぇヨウくん…。


プレゼント、買ったんだよ。


おしゃれもして、頑張ったのに。


なんで…なんで…


────約束破ったの……。