ふたりは人気のない移動教室のある校舎にむかう。

そして、ひとつ空いてる部屋に入る。


ぎぃ、といすの音がして、

私はこそっと、二人の会話を聞いた。

(ああああなんてことしてるんだ…)


「今日は、お弁当なに?」

「これです」

「おいしそー!」

「食べます?」

顔は見えないけどたしかに二人は会話している。

大樹、なんだか大人。

私と付き合ってた頃とはちがう。


「私ちょっと、手、洗ってくるね。」

先輩の足音がドアへ近づいてくる。

やばい、と思った時にはガラっと、ドアが開いて。


「え、」


春姫先輩は、驚いた顔をした。


「あ、…」

(やら、かし、た…よね?)

にげるにげない?どーしよ、、


「知り合い…かな?大樹、女の子来てるよ?」

春姫先輩は、そのまま私を教室の中に引っ張っていく。


「だれ………って、……琴羽…?」

大樹は驚いた顔をしてこっちを見た。

ああ、もう最悪!

早く逃げなきゃ。

「ごめん。…春姫先輩もすみませんでした!」

私は深く礼をする。


「あっ、ううん!私は別に!…ね?大樹!」

春姫先輩は、大樹の腕にからみつく。

ああ、私たちはこんなこと全然しなかったなあ。


「失礼、します…」

声が震える。


教室を飛び出した途端、久しぶりに涙が溢れてきた。


「…っく…うぅ、っ…」


渡り廊下を、渡って、トイレにかけこもうとした、そのとき─────。


「琴羽、ちゃん、?」