「この気持ちはすぐにはまだ消えないけれど、いつかちゃんと、琴羽ちゃんと話せる日が来るの楽しみにしとこっと」

ねっ、と無邪気な笑顔。



いつも、女の子が横にいる時の、あの甘いマスクとはちがう、

明るい笑顔だった。



「じゃっ、失礼します」


私は教室を飛び出して、

ヨウくんの待つ、靴箱へ向かう。


「あは、きりかえはやーいっ、そゆとこいーよ」


うしろから幸せな笑い声が降ってきて、


ああ上手くいったんだ、って。


私もなにか、できたんだなって。


嬉しくなった。







靴箱には、ヨウくんが待っていて。


「ヨウくんっ」


私は、ヨウくんの胸に飛び込んだ。


「おわっ」

いきなりのことで体勢を崩しそうになるヨウくんだけど、

私はそんなことおかまいなしに、

胸に顔をうずめた。


ああ、この匂いやっぱり好き。


あの頃から変わらない石鹸の、香り。



「…教室でるとき、かっこつけて待ってるからみたいな事言ったけど、ほんとは不安でしょうがなかった…、俊、無駄にかっこいいから奪われるかもって…」


良かった、と安堵の声をもらし、

ヨウくんは抱きしめる力強くした。


ヨウくんにぎゅっ、てされるの好きだなあ。


「私はヨウくんしかみてません」


柏木先輩には悪いけれど。


「うん、ありがとう…」


ゆっくり体が離れる。



顔がちかくて。


瞳と瞳がぶつかる。


絡み合って、離せない。



「ヨ、ヨウく…ここ、がっこ…」


呟いた時にはおそくて。



ふわり、優しいキスがふってきた。


今度はくちびるに。


触れるだけのキス。



すごくあつくて、優しくて、

甘くて。


嬉しいのかとろけそうな笑顔をうかべるヨウくんは、当たり前だけどかっこよかった。