甘い香水の香りが鼻をかすめる。


「ちゃんと、話した。…ありがとう。」


深々と礼をするヨウくん。


私は、

「良かった、です」とだけ言った。



「それで、今から話すこと聞いて欲しい」

柏木先輩の、真っ直ぐなアーモンド色の瞳が私をとらえる。


逃げちゃ、ダメ。


向き合うんだ。



「俺、いままで好きな人とか出来たことなかったのね。で、いつも暇だから誘われた女の子と遊ぶーみたいな感じだったけど。…ある女の子に出会って、はじめは可愛いって思うだけだった。…でもこの前、はじめて話してみてすごく、素敵な子で」


柏木先輩の目は全然ゆるがない。


そして、続ける。


「恋しちゃって…。そっから俺、その子に気に入ってもらおうって、女の子と遊ぶのもやめた。まぁ、その恋は叶うはずないんだけど…、すごくいい子で可愛くて、俺のこと否定しないんだ。俺が何かを言ったら優しい言葉が返ってきて、ああこの子が毎日そばにいれば、って思った。」


息が苦しい。


気を緩めたら、涙が溢れそう。




「琴羽ちゃん、君が好きだ」




柏木先輩の先輩は、少し照れくさそうだった。



気持ちはすごく、すごく嬉しい。



だけど…


私は────。




「…っ…ごめんなさい!」


顔をあげれない。


柏木先輩なりの、

不器用だけど、ちゃんとした告白。


ちゃんと、答えなきゃ。

「私には、好きな人がいます。だからごめんなさい」


深く頭をさげる。



告白って、勇気のいるもの。

自分が一番よく、わかってる。



だから、中途半端に返しちゃいけない。


まっすぐ、自分の想いを伝えなきゃいけない。


「柏木先輩、には…私ひどいこと、たくさん言って。それなのに、柏木先輩は優しくって。私も素敵な人だなって思いました。……でも、それ以下でもそれ以上でもなくて。私にはずっと、ずっとそれ以上に恋愛として見ている人がいるから、だから…」


だんだん苦しくなってきて。



「よっし!おっけい」


それをみかねた柏木先輩は私の話をとめた。


「ちゃんと、答えてくれてありがとう。」