「おっと、ヨウさま」


おちゃらけたように、柏木先輩は、両手をあげる。


なにもしてない、というように。


「…俺だって困ってんだよ。相手がお前だから。どう、追っ払ったらいいかとか、接したらいいか、とか…」


ヨウくんは頭をクシャっとさせ、

苦痛の表情をうかべる。



なんとなく、わかる。


こんな私でも今、どんな状況なのか。




「ほったらかしてくれたらいーのに。…なんでお前と友達なったんだろ、さいっあく」

柏木先輩はそう、言った。



苦し紛れの笑顔で。




「…っ!」



柏木先輩、なんてことを…!!

私でも心が痛いのに、

こんなの、ヨウくんは…。




「俺、先行くわ。二人で仲良く登校したら」


いつにない冷たい声で、

ヨウくんは私達をみた。




「ヨウくん…っ」


「ごめ、今日は一緒にいれない…」


そのまま、すたすたと歩いていってしまうヨウくん。


その背中は、ちっちゃくて。


追いかけたくて。


でも、弱虫の私にはできなくて。


悔しかった。



「さ、一緒に行っちゃう?」


どんっ!

私は、柏木先輩の胸を強く押した。


「最低です!…友達になんてならなければ良かったなんて、思ってもないこと言わないでください!!」


お互い素を見せ合う二人。

きっと、ヨウくんも柏木先輩も、

出会ってよかった、って思ってるはずだ。


あんな、苦し紛れの笑顔で、嘘つくなんて…。



「今日、ヨウくんを、東校舎の1-Aの教室に、呼ぶので…二人で話をしてください。さよなら」

私はぺこっと、礼をしてその場を去った。




どうして、こんなことになったのだろうか。


どこで、間違ってしまったの。