ぱたん、


虚しくとびらがしまる。


新鮮な空気が、私の頬をなでた。



「…っはぁ…、あー!もう!」


ヨウくんは、何かと葛藤してるみたい。



「ヨウくん…?」


「ごめん、…よし帰ろう!手、」


無理やりな笑顔をはりつけたヨウくんは私に手を差し出した。


こんなの、だめだよ。


こんな顔させたまま、握れないよ。


「わ、私、は…」

でも、何を言っても無理な気が、する。



今の私には。



何もわかってない私。


「大丈夫だから、こと。」

ね、と強引に手を握るヨウくん。


どことなく震えていて。


その震えが私にまで染み渡ってきて。

私は気づかないふりをして、歩いた。


「ヨウくん、柏木先輩と、なにが、あったんですか…?」


アパートから出た私は思い切って聞いてみる。


「ん?…なんもないよ。ことには、なーんにも、関係ないから大丈夫。」

ぎゅ、と握る手が強くなる。


じゃあ、なんでそんな泣きそうな顔を…。



でも、私はそれを聞けなかった。


聞いたら、もう戻れない気がしたから──。