「近づかないでって言ったのに…」


うすく、疲れたように笑った柏木先輩は、

そのまま目を閉じる。



がちゃ。


「ただいま!」


焦るようにはいってくるヨウくん。



「……。」

なんで、こんなに、後ろめたい気持ちになっているの?


「こと?」

ヨウくんが私の顔をのぞき込む。



「っ…、あ、冷えピタなくて、ハンカチでしちゃいました…」


にこ、と笑ってみせる。


「そ、うか。…うん、ありがとう。」


優しく微笑むヨウくん。


なにかに、勘づいているのか、どうなのか分からない。


こわい。逃げたい。



ヨウくんは今度は柏木先輩に向き合う。


「俊、食いもん買ってきた。食える?」


ヨウくんの呼び掛けに、

柏木先輩はむくっ、と体を起こす。



そして、冷たい瞳で。


「…ヨウ。分かってんなら優しくすんなよ」

と。




すごく、静かな時間がつづく。



口を開いたのはヨウくんだった。


「…っ、わかって、るから、…お前が友達だから、気付かないふりしてんだろ!!」


ヨウくんは大きな声で話す。



なにが…?

なにも、わからない。



は、と自称気味に笑った柏木先輩。


「食べ物ありがと。琴羽ちゃんも、ありがとう。…かえって」



冷たい一言だった。



「…いこう、こと。」

ぐっ、と強くてをひかれ、

よろける私。



「ごめん、」


ヨウくん。


どうして、

そんなに苦しい顔するの…?


柏木先輩となにがあったの…