「どこに行くんですか?」


駅を出て、

ショッピングモールあたりを歩く私達。


「えーと、映画観て、ウロウロしようかな、と…。ほかのプランでもいいけど!」


不安そうに私の顔をのそぎ込むヨウくん。


なんか、可愛いや。


「そのプラン賛成です!」


私が笑ってみせると、

ヨウくんもホッとしたように微笑んだ。




柏木先輩のこととか、昨日の夜ご飯に大嫌いなグリンピースが入ってたこととか。


悩みや嫌なことがスーッと消えていく。


ほったらかしにしちゃいけないのは分かってるけど

今は、いいよね…?




✲✲✲




映画館に着く。


「なにみたい?」

ヨウくんにたずねられ、

宣伝ボードに目をやる。


「ん~…」


戦闘もの、恋愛、ホラー…

たくさんあるなかから選んだのは、


恋愛もの。


最近売れている可愛い女優さんと、女子に膨大な人気をはかる俳優さんが出演してる映画で、

たしか、病気やなんやらこーやらで、

すっごく泣けるとか。


ひそかに観たい、と思ってたものだ。



「やっぱり」

ヨウくんは嬉しそうな笑みをうかべた。


やっぱり…?


そして、そのまま、

入場口へ向かってしまう。


「ヨウくん?チケット買うの忘れてますよ!」


私がそう呼びかけると、


「いいから、きて」

と、手を引かれる。


えぇ…、どういうこと?


そのまま、係員さんになにかを渡す。


え。え!?

ま、まって、なに。


入場口をくぐり抜けた私達。


「ヨ、ヨウくん!どういう事ですか…」


「前売り、買ってた。…そのほーが安いし、たぶんことは、この映画選ぶかなって」


はにかむその笑顔は、

心をすごく満たしてくれて。


「あ、ありがとう、ございます…」

そう、お礼をするので精一杯だった。