その時、


「しゅーんー!!」


上から女の子の声が聞こえた。


二人で顔をあげる。


髪の長い女の人、で…。



あ、この前の。


玲奈先輩ってひと。


長い前髪をかきあげて、

「今日カラオケいこーよー」

と、はにかむ、玲奈先輩。



私がいても、おかまいなしってかんじで。


もう、みんな分かってるのかな。


柏木先輩の横には女の子がいる、ってこと。



「あー、ごめん!今日、俺パス!!」


顔の前で手を合わせて、

渋い顔で上を見上げる、柏木先輩。



「おっけー、またいこーね!」


玲奈先輩は、きゃははっと、女の子達のわらいごえのなかに、消えていった。



「なんで、パスしちゃうんですか?」

素朴な質問。


「ん?めんどくさいから?」


え。

「でも、女好きじゃ…」


はっ。また!!

いけないことを!!


「あははっほんとにおもしろい。…女の子好きじゃないよ。ただ、向こうが来るから断わらないだけで。…てゆうか、女の子と遊ぶだけで軽いっておかしいと思うんだ。だって普通に男は男とあそぶでしょ?その遊ぶ相手を女に変えただけで、そういうイメージもたれんの困る。」


どくん。


瞳は暗く。

笑みを浮かべているけれど、

毒々しくて。


「…たしかに、そうだけど。」

私は何故か反論していた。



「あなたは本当の恋をしたことないだけで…」


「それがなに?」


「わかんないのに勝手にそうやって女の子を期待させない方がいいと思います……」


グッ。


腕を引き寄せられ、

壁に押し付けられる。


「…っ」

こわくて、目をつぶる私。



「はは…。ヨウ、いい彼女もったなあ。俺にとってはマイナスだけど。……琴羽ちゃんに、何がわかんの?」

吐息が、ふ、とかかって。


うすくめをあけると、

「じゃね。」


と、穏やかな笑みで、声で、

柏木先輩は、去っていった。



どくんどくん…。


わたし、なにしてんだろう。