朝──。

昨日 少し冷やしたおかげで、

目は大きくは腫れてなかった。

すこし、充血してるかな…。



朝ごはんを食べて、制服に着替える。


お姉ちゃんやお母さんは、

なにもなかったかのように、

接してくれた。


「よしっ。…いってきます!」

「「いってらっしゃーい」」


ガチャ、

家のドアをあける。



「あ……、」

ドクンっ、

前で待っていたのは、

大樹。


「ふぅ……」
少し深呼吸する。


うん、大丈夫、大丈夫。

私が崩れちゃダメだ。

逃げちゃダメだ。


「大樹!おはよう!」

笑顔で言ってみせる。


「……ごめん!!」


大樹はいきなりバッと頭を下げた。


「だ、大樹?頭…あげて?」


大樹肩に手をやると、

カタカタと小刻みに震えていた。

ずき…、

大樹も、苦しかったんだね。


「俺ほんとに、馬鹿なことして、…こんなことしたら琴羽に嫌わられるなんてこと分かってたのに、止めれなくて…本当にごめん!」

大樹は、もう1度頭を下げた。



「大樹。私も辛かったし苦しかった。…けど、大樹は、実際興味本位でそんなことする奴じゃないし、どれだけ本気なのかもよくわかった。…でも私たちはもう別れた。大樹が私が離れることを望んだんだよ…?」


すべて、すべて、

問おう。

なにもかも、

解決させて。


別れたことも、

キスされたことも、

私にはすごく苦しい体験だった。


でも……
大樹もいっしょだった。

それは、私がよく分かってるから。


大樹は、答える。

「そう、だな…俺は………あの時、確かに琴羽を手放した…。でもあれから1度も琴羽を忘れたことはないし、…って言い訳にしかなんねえよな…だからハッキリと言う。」


じっ、と大樹が私の瞳をとらえる。


もう、ドキドキなんてしない。


苦しくもない。



「琴羽が好き。」

久しぶりに聞いたその言葉。


とくん、

と胸に響く。


「…うん。…ありがとう。」

私もちゃんと大樹の目を見た。


「でもね、ごめん。私は、私は…ヨウくんが好き。」


手が震える。

本人じゃなくても、

口に出す、ってこんなにも、

勇気がいるんだ。


大樹は、直接言ってるから、それの何倍も、何十倍も、ドキドキしてるんだよね。


「うん。知ってたよ、くくっ。幼馴染、なめんなよ?」

大樹は笑みを浮かべた。


スッキリとしたいつもの大樹。


くせのある、笑い方も、

くしゃっとなるえがおも。


「こっわー!」

私はめちゃくちゃにわらって、

1発、

大樹の腕をたたいた。


「いってえ!くくっ、さすが馬鹿力!」
「うるさいっ」