「琴羽に、別れをつげる一週間前、春姫と会った。…キス、した。」


ずき。


…っ、

衝撃的な事実に胸が痛い。


「どうなんだろ、キスされたって感じだったけど、よけれなかった。…それで、俺、琴羽に言わなかった、てか、言えなかった。」


「春姫先輩が好きだから?」
自分で言って悔しくなる。


私たちは、別れる寸前まで仲良しだった、

なのに、あの時、大樹の唇は、

ずっと、春姫先輩が、…。


「ちが!……信じてもらえるかわかんねえけど、琴羽が好きだったから…、失いたくなかったんだよ。俺、はじめ琴羽と付き合った時さ今まで一緒にいたから離れることなんかないよなって、すっげえ安心してた。」

うん…私も。

ずっと一緒だったもんね。


大樹は続ける。

「でも高校に入ると、琴羽は可愛くなるし結構、男子からモテるし。不安で仕方なくて。もし、俺が今回、他の子とキスした、なんて言ったら突き放されるとおもって…。けど、途中から、俺はなんてことしてんだろ、って、琴羽みたいな良い奴の横に居てふさわしいのか、って考えた時……。」


「別れる、って考えになったの?」

私がたずねると、

「うん。」と、大樹はうなづいた。


「そ、っか。」

見損なったとか、嫌いになったとかそんなんじゃないけど、

すごく、寂しい気分になった。

私と大樹はなんでも言える間柄だった、はずなのに。


ただ、私が今言えることはひとつだけ。

ちゃんと自分の思ってること伝えなきゃ。

「大樹、私、…別れてからも大樹のこと、好きだ、った…」


あ、れ…?
こんなはずじゃない。


過去形になんてなるはず…ないのに。


「…それ、は、過去のこと?」

大樹も首をかしげる。


「…わ、わかんないよ。」


「琴羽。」


大樹の顔を見るとその顔はいつになく、

真剣で────。