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「ただいま~」

うわ、もう8時だ!

靴箱のお掃除もして、

いろいろしてたら遅くなっちゃった。


かるーくお母さんに叱られたあと、夜ご飯をたべる。


そして、いつもよりちょこっと可愛い部屋着に着替えて、

髪を三つ編みに結わえて、

色つきリップをぬる。


「お母さん!ちょっと、大樹んとこ行ってくる~」

「はいはい、早く帰ってくるのよー」


よしっ。


たっ、と外にでる。

久しぶりに、

大樹の家……。


インターホンを押す手が震えるけれど、

なんとか押せた。


ピンポーン…


少し、時間がたったあと、

ガチャリ。


でてきたのは、

「あ、琴羽。」

大樹だった。


「あっ、夜遅くにごめん…ちょっと、話せる?」

「…うん。外じゃなんだから久々においでよ。」

ニッと、いつも通りに笑う大樹だけど、

どこかよそよそしくて、弱そうに、消えそうに見えた。


私は今から何を話すんだろう。

何かを、解決しなきゃいけないのは、わかってる。

けど、

何を話したらいいの…?


大樹の家に入る。

「おじゃまします!」と言うと、

「はーい!」と、大樹のお母さんの声が聞こえた。

階段を上って、すぐ横にある大樹の部屋。


カチャ…。

「どーぞ。」「あ、ありがと!」


あ、大樹の匂いだ。

よくここでゲームしたり漫画読んだりしたよなあ。

スッキリとした部屋ですごく居心地が良い。


私はブルーのカバーの、ベッドに腰掛ける。


大樹は、その下の床に座った。



少しの沈黙のあと、私は話す。
「……春姫先輩と、別れた、の?」

唐突すぎたかな…。


「うん、別れた…ふられたんだ。」

「大樹、私ね、全部、話聞いて…」

「俺も。…春姫から聞いた。なんか信じらんねーよな、ははっ…」

淡い笑いはすぐに消えて。

「……俺、最低なんだ。」

大樹は、少し俯いてそういった。


「…うん、どうしたの?」
そう尋ねると、


「今から話すことは琴羽を苦しめて、悩ませるかもしれない…それでもいいか?」


大樹は、私の目をしっかり、見て、そう、言った。


久しぶりに絡み合う目線。


「…うん。だって、話聞くために来たんだもん!」へへっと笑ってみせると、

大樹もほっとしたような笑みをうかべた。