「あいつと俺は中学んとき付き合ってた。」


ヨウくんは、ぽつり、ぽつり、

と話し始める。


あいつって、言うのはきっと、ヨウくんの

好きな人、なんだろう。


ズキ……。


好きな人…か。


どうして、こんなに胸が苦しいの。



「それで、高二になるまで付き合ってて。…でも、俺に好きな人が出来た。」

「え…?」


じゃあ、その子は好きな人じゃあない…ってこと?

何を、ほっとしているんだろう。


「別れた。3年間の思い出を全部、俺から捨てたんだ…。そしたら、あいつは泣いて…」

苦しそうに話す、ヨウくん。


「ヨ、ヨウくん…無理に話さなくてもいいですよ?」

見てられなくて、

握られた手をぎゅっと握り返す。


私たちは、公園に移動して、

ベンチに座った。


「あいつ、俺の好きな人を知ってさ…。その子に仕返ししようとしたんだ。…案の定、成功してた。その子は大事な人からふられて、あいつはその子の彼氏と付き合った。」


そんな……。

略奪、ってこと…?

聞いてて胸が苦しくなる。


「春姫、美人だからさ、きっとちょっと罠をかけただけで、その子の彼氏は……。」

「え?」


春姫……って?


きっと、ヨウくんも、

ぽろり、と口から出てしまったんだろう。


しまった、という顔をしていた。


「ど、どういうこと…」

「ちが、あの、…」
ヨウくんは否定しようとする。


「ヨウくん?」

信じられない。

なんで。なんで。

そんな事が…。


「わ、私、帰ります…っ、さよなら」

私は走った。

「こと…!」

ヨウくんの声。


ごめんなさい。

ごめんなさい、ヨウくん。

私そんなに強いひとじゃないの…。


ヨウくんは、春姫先輩が好きだった。

だけど、…あ。


ヨウくん、って、

私のことが…好きなの…?



ああ、もうなにがなんだかわかんない。