日が暮れ始めた。

そろそろ帰らなきゃかな?


ヨウくんは、すでに抱きしめるのをやめていて、私の横にぴったりとくっついていた。


そろそろ、帰った方がいいよね…?

「ヨ、ヨウくん!私いっかい、ほうきもどしてくるから、待っててください!」

そう言うと、
ヨウくんはうつむき加減にこくんと、うなづいた。


床に細かく散らばる砂をささっと掃いて、

職員室へ走る。


まだ、心臓が痛い。

苦しい。

クラクラと、酔っているような感覚。



人の少なくなった職員室に入り、

ほうきをかえして、

春川先生に帰っていいよと言われた。


「失礼しました。」

そう言って、急いで靴箱に走る。



「ヨウくん!!」

靴箱について、

俯いているヨウくんに呼びかける。


ふっ、とヨウくんは顔を上げる。



「……っ」


気を使っているような、
疲れたような、

貼り付けた笑顔だった。


こんなんじゃ、なかった…。

ヨウくんの笑顔はもっとあったかくて。


ヨウくんをそうさせてしまう、

なにかがあった。


それだけは、私にも分かった。


「ヨウくん、帰りましょ?」

「うん、ごめんな。」



「いえ。……っ!?ヨウく…っ」

ふいに、手を繋がれる。

何が起こったのかわかんなくて。

私はただ静かに、その手の熱を感じた。


私たちは、無言で、あるいていた。


そして、途中で、

ヨウくんがぽつり、と話し始めた。