「えっ?」

いま、誰が呼んで────。



ふ わ っ。

優しい温もりに包まれる。

「……。」

優しい石鹸の匂い。

少し、かすれた声で "こと" と呼んだ声。


きっと、

ヨウくん。


「ヨウ…くん?」

おそるおそるよんでみる。


どきん、どきん、

だんだん鼓動がはやくなる。


鼻がヨウくんの胸にくっついて、

いい匂いが鼻をくすぐる。


好き、かも、

この匂い。


くらくらしてる。

抱きしめる手の強さ、

匂い、呼吸、

すべてが心地よくて。


急に、ヨウくんの体はズルズルと下におり、座る形になる。

それにつられて私も座る。

それでもヨウくんはまだ、

私を抱きしめていた。


「すんっ…」

少し、鼻をすする音が聞こえて。


「…っ?」

泣いてるんだろうか。

ヨウくんみたいな、大人のような人が泣くのかな…。


「ヨウくん、大丈夫ですよ」

私は優しく囁くと、

ふわふわの髪を撫でた。