「ちょ、ほんと、抑えらんないから離れてー!こと、こと、」



私がぎゅうっと強く抱きしめると、


ヨウくんは、


なんだか焦っていた。




でも、離したくないよ。


もっとぎゅーってしたい。



「だって、ヨウくんが、喜ばせてくれるから…」



ヨウくんの顔を見ると、


真っ赤にした、ヨウくんが。



「…っ、もー、さっき言ったじゃん、歯止め効かなくなるからって」




そんなの、効かなくていい、


とか一瞬思ったけど、



これは、また別のお話で。





「ヨウくんっ、大好きっ」


もっともっと、力いっぱい抱きしめると、





ひょいっ、と身体を抱き上げられる。



「ひゃっ」



「ほら、帰んぞ」



そのまま、すたこらさっさと、

階段をおりる、ヨウくん。



ヨウくんの首元からあの、いつもの、

石鹸の香りがした。




歯止め効かなくなるのは、



私、かも。





玄関に着くと、下ろしてくれて、


私は靴を履いた。




「別れ際っていつでもさみしいね」



そう言って、みせれば、



ヨウくんは、ふ、とかすかに笑って、



「送るよ」って。