「さっ、すわってすわって!」

連れてこられた場所は、資料室だった。


高山先輩は、さっそく袋をとりだす。

「えーとこれがメロンパン、こっちはいちごディッシュ、これは、えっとなんだったかな、マロンケーキパン!」

一つ一つ、机の上に置いていく。


思わずぷっ、と吹いてしまった。

だって、コーヒーとか飲みそうな先輩が、物凄く甘党なんだもん。


「あ、あと、プリンと、いちごみるくも………って、琴羽ちゃんなんで笑ってんの?!」


先輩、それは可愛すぎますよ、、

ギャップてやつですね。


「なんでもないです、ふふっ…あ、いちごディッシュもらってもいいですか?」

「どーぞ。」


いちごディッシュを、とり、口に運ぶ。

甘いイチゴジャムと、パリパリとした柔らかなパンがよく合う。

「おいひい!、」


「ふはっ、飲み込んでから喋んなよ~」


あわてて飲み込もうとする。

「すみませっ、うぐっ」

焦って、パンを喉につまらせる。

ううっ、、


「はい、」

先輩は私にいちごミルクを差し出す。

先輩に差し出された、ストローに、

かぶりつき、ゴクンッと飲み込む。


「ぷはーっ、ありがとうござ…え、」

高山先輩は、私が飲んだそれを、

ふっつうに、ごくごくと飲んでいた。


ぴゅーーっと、顔が赤くなるのが分かる。


「そんなんだから、無理なんだよ…」


「え?」

高山先輩が何か言ったけど聞こえなくて。


「ううん、なんもない…ゆっくり食べてね」


「はい!」


初めて喋ったとは思えないほどすごく喋りやすくて、

なんか居心地がよかった。


そのとき。

「よう~バスケすんぞ~」

がらっと、資料室のトビラが開いた。



「あ、やっちまった」 高山先輩はそう言った。


ん?


入ってきたのは、高山先輩の友達であるだろう、

男の先輩4人。


その先輩たちは、

パチクリとめをひらき、

私と高山先輩を交互にみた。


「あは、ようくんったら~っ」
「そーゆことならゆってくれよ!」
「今日は4人で対決だっ」
「ごゆっくり~」

4人の先輩達はゾロゾロとでていく。


「あっ…」
もしかして彼女とか思って、勘違いしてたりするかな!?

そのせいで、高山先輩も遊べなくなる…?

そんな迷惑かけること、しちゃだめだ!

私はがらっと、資料室を飛び出し、

「あのっ!」

と4人の先輩達によびかけた。


みんな振り返ってくれて、私は叫ぶ。

「えっと、私彼女じゃないので!なので、高山先輩連れてってあげてくだ──んっ」

言いかけたところで大きな手で口をふさがれる。


「ごめん!今日だけパス!明日こそは俺に勝つようにせいぜい練習しとけよ!」

高山先輩は、そう言うと、

私を資料室にひきもどした。


「あ、ほんとに、いいんですか…?」

「うん!」

犬みたいにきらっきらの笑顔で笑う先輩は、

ほんとにかっこよかった。


「パン、とかありがとうございました。何円ですか、これ?」

ポケットからちっちゃな小銭入れをだす。


「ああ、いいから。」

「だめですよ!ちゃんとしなきゃ、」

「先輩が後輩にお金払わせるってなにごと、ってなるからいーの!」

「むぅ…じゃあ今度なにかお礼させてくださいね!」

先輩はうん、と笑ってうなづいた。


「あ、そーだ。じゃーさ、いまお礼してくんない?」

「えっ?」

先輩は考え込むと、何かを思いつき、

「よう、って呼んでよ?あ、あとLime交換も…お願い二つだけど…。」

といった。


うひょう!?
先輩のこといきなり呼び捨てですか!?

Lime交換は、嬉しいけど…。


「名前呼び捨てはむりですよ!!?」

「なんで?お礼として、だよ?」

先輩は、意地悪っぽくほほえむ。


うううう…!



「よう、くん…」

ぼそっと呼んでみる。


反応ない、な…と、顔を上げる。


そしたら、

いちごみたいに、顔をまっかっかにした、


ようくんがいました。