「こ、とっ」


いきなりのことに、

体勢を崩しそうになるヨウくん。



「か、勝手なことしてごめんなさい。でも、最後のわがままなんです…聞いてくだ、さい」


震える声で絞り出すように言うと、


「うん、わかった」

と優しい声が降ってきた。



ヨウくんは、手は回さなかったけど、


私の背中をぽん、ぽん、と優しく叩いてくれた。



「あの日、すごく気合い入れてて、プレゼントも買って、私自身すごく楽しみだったから来なかった時すごく、ショックでした…。」


「うん。」



「理由も聞けずにもやもやしたままで、…冬休みもすっごく暇でした。」



「うん。」



「でも、電話に出なかったのは私、ラインを見なかったのも私、…あの時私が電話してたら何か変わったのかもしれないのに。私は全部無視したんです。…ほんとにすみません。」



「うん…」


ヨウくんの手が止まる。



それでも私は続けた。

「あの時話していればヨウくんから嫌われることもなかったかもしれないし、もしかしたら別れるってこともなかったかもしれない。…そんな後悔しても遅いのに」



「う、ん?」


ヨウくんの声が疑問形になる。




「でも、私。それでも……まだ大好きなんです。ヨウくん以外考えれないんです。」



そう言って、顔を上げると、


至近距離にヨウくんの顔があった。




「…っ」


ヨウくんは、どことなく嬉しそうな顔をしていて。



「こと、やばい、ぎゅってしたい」

ヨウくんの吐息が頬にかかる。



「…!」


顔が熱くなる。



「我慢出来ない。…だめ?」


そんな顔で聞かれちゃダメなんて言えないよ、ずるいよ。



「だめ、じゃ、ないです…」


そういうと、



ふわ、と腕が回ってきて。



「…っうぅ」


我慢してた涙が溢れてきて。


抱きしめる腕は強いはずなのに、

全然痛くなくて、指先は柔らかくて。


頬にあたる柔らかい髪がくすぐったい。


そしていつもの石鹸の匂い。




「ヨ、ヨウくん…っ」


「んー?なに?」




「別れたくないよぉ…っ」


本音がでてしまった。



これでダメなら仕方ない。



「こと」

ふっ、と笑い声がして。



少し体を離して、


見つめあった。