教室をでて、

ヨウくんについていく。



久しぶりの、大きな背中。



心臓がバクバクして、


口から飛び出そうだ。




着いたのは、人気のない東校舎の裏庭。



誰もついてきてないみたいだし、

大丈夫そうだ。



そして、私達は花壇のレンガに座った。





少し、沈黙。



ただその時間さえ、愛おしくて。



もう、戻ってこないのか、なんて思うと、


この時間がすごく大切なものにみえた。



ヨウくん。


かすかに香る石鹸の匂い。


風が吹くたびに柔らかく揺れる淡い色の髪。




ヨウくん、好きだよ。


好きなのに…。


大好きなのに…。






この沈黙をやぶったのは、


ヨウくんだった。



すこし、深呼吸をしたヨウくん。



「ひさしぶり」と、笑顔を見せてくれた。



私はこくん、とうなづくことしかできなくて。



「…本当にごめん。」


ヨウくんは頭を下げる。



何に対しての、ごめん?



「あの日、ハルが倒れて、それで死んじゃう、ってゆうからトラウマが頭から離れなくなって…トラウマは、」


ヨウくんはトラウマの内容まで教えてくれた。

遊園地でのできごと。


たしかに、私の立場で、幼馴染…大樹がそうなったらこわいだろう。



そして、続けた。


「ハルがいなくなることを恐れた俺は、1番大事な人を傷つけた。…こと、待っててくれてありがとう。行けなくてごめん。…プレゼントありがとう。」



そう言って、ヨウくんは、

首元から何かを引っ張り出す。



「俺には付ける資格さえないんだけどな」


と、雪のネックレスを揺らした。



「…っ」


そんな、のつけて。


期待してしまう。


期待させて、別れよう、なんて言わないで?


春姫先輩の所へいかないで。


私のところに帰ってきて。



笑顔を向けるのも、

触れたりするのも、

私だけでいいの。




ヨウくん──────。


抱きしめたい。


そう思ったら、


体は勝手に動いて。




私はヨウくんに抱きついた。