【琴羽】


冬休み最後の日は、

宿題に向き合って、おわった。


明日から学校。


もしかしたら、ヨウくんに会うかもしれない。


はじめてだな、

違う学年で良かった、なんてこと思うの。


ちくり、針を刺されるような痛みがむねをおそって。


会うことはこわいはずなのに、

会いたい、なんて。


でも、会っても何も起こらない気がする。


ヨウくんはきっと、


私なんて、忘れてる。


もしかしたら、もう、新しい好きな人できたかも、な。


考える度に、思い出す度に、


胸が焼けるように苦しくて、


息が詰まって。



「ヨウくん…」

さみしさに気を紛らわすように、

声を押し殺して泣いた。



きっと、明日、

最後になる。


彼とはさよならするんだ。


そうだよね…?ヨウくん…。



まだ、好きだよ。



✲✲✲✲


久々の学校は全然変わらなくて。


髪を切った人や、

化粧をし始めた人がちらほらいたくらい。


みんな、「あけおめ」「おはよう」と、

声をかけてくれる。


笑顔で返す私に、

沙羅と大樹は、


「無理しないで」と、気にかけてくれた。



はあ…いい友達と幼馴染もっちゃったなあ。





「で?高山先輩、とは、どうなの」

始業式のあとの、

教室を戻る道で沙羅に聞かれる。



「冬休み中はさぁ、なんとなく禁句だと思って聞かなかったけど、そろそろ、ね?」


沙羅…。

気遣いが身に染みて。


「わかんない…。でも、きっと別れるよ。」

「なんで?」


うん、本当になんでだろう。


「私、まだ、大好きなんだ。ヨウくんのこと。どれだけ傷つけられても考えちゃうのはヨウくんだけで……でも向こうは私のことなんかもう、」


言いかけたところで、

沙羅が、むにゅ、と

私のほっぺをつねった。


ちょ、ちょっと痛い…


でも、真剣な沙羅のかおをみたら、


笑い飛ばせなくて。


「じゃあ伝えなよ。最後に。別れるくらいなら、最後好きだって言いなよ!」

お母さんみたいに怒る沙羅。


「琴羽の、さ、人の事考えて行動するとこ好きだよ…でも今回は違う。ひどいことされたんだから好きだって言ってもバチは当たんないと思うよ。向き合わなきゃ、いけない。」

沙羅は、まっすぐ私を見て続けた。


「私は誰よりもそばで応援してきたから、余計にそう思うのかも。おせっかいだってわかつてるけど、それでも私は琴羽に頑張ってほしい。」


最後沙羅は、

「後悔の、ないように。」

と、言い残した。



そして、トイレに向かう沙羅とは

そこでわかれた。


帰ってきたらお礼言わなきゃ、な


後悔の、ないように。


バチ あたんないかあ。


沙羅の言葉がひとつひとつ、

よみがえってきて。



うん。


最後だ。


伝えよう。


好きって。


電話に出なくてごめん、って。


LINE返さなくてごめん、って。







まだ、好きでいてごめんなさい、って─────。