「じゃあ、もう一度、何度でもアタックしに行けよ…黙って去ることが償いになるって思ってんなら大間違いだからな!…俺が体験したこと、だし」


俺は、最後の最後、


ヨウ先輩を睨んだ。



「お前、男だろ?」って。



あの頃の自分に問いかけてやりたい言葉。




「……あー、あはは、だめだなあ、大樹くんには、完敗だ。」


柔らかい笑顔。


なんとなく、琴羽が好きになる理由が分かる気が、した。


「俺はやっぱりまだ琴羽の隣にいる資格はないないけど、でも、大樹くんみたいないいやつに負けたくないから頑張るよ」


とん、と肩にてを置かれる。


すこしだけ、震えてて。


あ、なんだ、

この人も、

普通の、ひと…って安心した。


完璧なんて存在しない。


俺はひとつもこの人に誇れるものはないけれど


せめて最後、琴羽へのつぐないができたかな。



「じゃ、頑張ってください。今度泣かした時は奪いますから」


「うん、望むところだ。ありがとう、大樹くん。」




捨て台詞にもかかわらず、


甘い綺麗な笑みのヨウ先輩。



男でも惚れちまうぜ。はは。




これで、琴羽は無事、か。


なんだか、すごく寂しいけれど、


琴羽が笑うなら、

それでいっか。


とか、思ってみたり。


けれど、


やっぱり失恋は、


まだ辛いものだ。