「そのときはどんな手段を使ってでも、堂園を殺す」

虚ろな目付きに険しい表情。
何故かはわからないが彼は堂園を憎んでいる。
自分の命をかけてまで、堂園を総理大臣の座から引きずり下ろしたい理由が私にはわからなかった。

「どうしてそこまでして…」

私がそう言うと彼はうつむき、口ごもる。
過去に堂園と、人には言えないトラブルがあったのだろうか。

堂園は結婚をしているのに他に女をつくって妊娠させるような男だ。
人に恨まれるような何かをしでかしていても、おかしくはない。

「…そんなことは君が知らなくていい。余計な詮索はするな。君はただここで大人しくしていてくれればそれでいいんだ」

そう吐き捨てると彼は私を置いて、リビングを出てすぐの部屋に入り勢いよくドアを閉めた。

こうして私と黒田の誘拐生活が始まりを告げたのだ。