……はあ、はあ、はあ。

大きな銃声が轟いたあと、訪れる静寂。
私は黒田の握る拳銃に咄嗟に手を伸ばしていた。

「…だめ」

銃弾はぎりぎり堂園の頭上を通りすぎ、壁にめり込んだ。

「止めるな!こういう奴は身をもって思い知らないとわからない」

わかるよ。
私だって死ぬほど憎い。
殺せるものならとっくに殺してる。

「あなたを殺人犯なんかにしたくない」

涙が頬を伝う。

「こんな男のために手を汚すことはない」

黒田の手を握る私の手が震える。

「あなたは優しい人よ。出会って6日しか経っていないけれど、私は心からそう思う。だから…私と一緒に一からやり直そう」

黒田の目を見つめて訴えかける。
彼は私の言葉に戸惑いをみせる。

「ね?」

私はそう言うと黒田に笑いかける。
すると黒田の拳銃を持つ手が緩み、ゆっくりと拳銃を下ろした。
黒田は静かに涙を流していた。