「無駄だ」

黒田は叫ぶ。

「並木琴子は家にはいない」

「何だと?」

堂園の額からは絶え間なく汗が流れ零れる。

「並木琴子はいま俺の友人…フリーライターの友人のところだ。まもなくお前の悪事は世間に公表される。お前は終わりだ…堂園!」

堂園は目を見開いて、息が荒くなっていく。
そしてまもなく床に崩れ落ちた。

「こんな…こんなはずじゃなかった!俺が総理大臣の座から陥落するなど…あり得ない!」

鬼気迫る堂園の姿を上から見下ろす。
黒田は無防備な堂園の頭に拳銃を向ける。

「まもなくお前のところにマスメディアが押し寄せるだろう。さあ、どう言い訳をする?16年もの間守り続けてきた地位が奪われてしまうかもしれない今の気持ちはどうだ?」

「ああああ!こんなはずでは!こんなはずでは!」

混乱状態の堂園には何を言っても聞こえないようだった。