「聞いていましたか」

黒田は突然そう言った。

「…お前、誰に言っている?」

堂園の表情がすうっと真顔になる。

「俺の言った通りだったでしょう?貴方が何十年も見つめ、想っていた男はこんな男ですよ!」

黒田は戸惑う堂園に構わず続ける。

「だからこれからはこんな男を忘れて、娘を見つめてあげてください。けっして…決して俺の母のようになってはいけない。お願いです…”琴子さん”」

”琴子”って、まさか…

「お母…さん?」

もしかしてお母さんも今回のことに関わっているの?

「この一週間、部屋のリアルタイム映像を見ていたのは二人だ。いまこの瞬間も、並木琴子は見ているだろう」

「お前っ…!」

堂園の表情が少しずつ険しくなっていく。

「俺は2週間前、並木琴子に会いに行き、彼女と約束した。”俺が堂園の本性を暴く。もし堂園の貴女へ言葉が嘘偽りなら、堂園にされたすべてのことを世間に公表してほしい”と」

堂園の額から汗が流れ始める。
自分がどういう立場にあるかを悟ったのだろう。

「命令だ!並木を…並木琴子を捕らえろ!捕らえて殺せ!今すぐだ!」

ポケットから無線を取り出し、堂園は叫ぶ。