別れたあとに堂園の子供を身ごもっていることを知った母は、せめて認知をしてほしいと堂園のもとへ足を運んだ。

すると堂園は言った。

『不自由のない生活をおくれるほどのお金は用意する』

『そういう問題じゃないわ』

母は堂園に怒りをあらわにした。

『落ち着け実可子』

『貴方のせいでこうなってるのよ!』

そんな感情的になる母に堂園は耳元で囁いた。

『総理大臣になることは俺の夢だったんだ。それは知っているだろう?』

『それは知ってるわ。貴方ずっと言っていたもの、小さい頃からの夢だって』

『総理大臣になるためにはこの方法が最も近道だ。その夢がもうすぐ叶いそうなんだ』

堂園は母の肩をそっと掴んで続ける。

『もちろん愛しているのは実可子だけだ。この先総理大臣になったら、必ず実可子をむかえにいくよ』

『そんなこと、信じられるわけ…』

堂園から顔を逸らして俯く。
すると堂園はポケットから小さな箱を取り出して、箱を開いた。

『これはその証だ』