堂園がその当時の総理大臣の娘と婚約したことを知ったのは、仕事から帰ってきてふとつけたニュース番組でだった。

『…嘘よ』

自分は遊ばれていただけだった。
そう知って母は絶望した。

『私のことは遊びだったの?』

次の日、母は泣きながら堂園に問いつめた。
するとこの男は言った。

『言っただろう?”私は総理大臣になる”と』

如何なる手段を使ってでも総理大臣になる。
国民の支持も大切だが、今の総理大臣の娘と婚約するということは総理大臣になるために重要なことだったんだ。

堂園はそう母に説明した。

『だから私たちの関係は終わりだ、実可子』

母は絶望した。
堂園の秘書は解雇され、堂園の恋人の座も失った。

本当に堂園を愛していた。

捨てられてしばらくは家から一歩も出ず、泣きつづけた。
涙さえ出なくなった頃、気分が悪くなり嘔吐を繰り返すようになった。

病院へ行き、診察を受けると妊娠していることが発覚した。
それが俺だった。