そんなことを考えているうちに、部屋の明かりがぱっとつく。

「あ…ついた」

上を見ると黒田と目が合う。

私、本当に抱き締められてる。
明かりがついた今、この状況はどうしたらいいの?
そして私、なんて大胆なことをしているの!?

「わ…っ!ご…ごめんなさいっ!」

腰に回した手を離して、黒田と距離をとる。
心臓がバクバクと大きな音を立てて、今にも飛び出そうだ。

「…寝る」

ぽつりと呟き、黒田は階段へとのぼっていく。

「あ…お、おやすみ…!」

私の顔を一度も見ずに、黒田は自分の部屋へ戻っていってしまった。


お礼、言えなかったな。

”俺はお前を誘拐したんだぞ?お前を殺すかもしれない。それをわかっているのか?”

言っていることと行動が合ってないよ。
殺そうとしてるなら、あんな風に優しく抱き締めたりしないでしょ?

この胸の高鳴りは、暗闇のせい。
いきなり抱き締められて、驚いたせい。

私はそう言い聞かせて、顔の火照りがおさまるまでその場に座り込んでいた。