「…しょうがねえ奴だな」

黒田はそう言うと、こちらのほうへ歩いてきて私を引き寄せる。

「えっ…」

「そのまま目閉じてろ」

黒田の心臓の音が聞こえる。
私と違うリズムを刻んで。

私は黒田の腰に手をまわす。

あたたかい。
黒田の体温を感じる。
私よりも冷たくて、ゴツゴツした身体。

男の人に抱き締められたのなんて、初めてだった。
黒田の胸の中って、何故か落ち着く。

やっぱり、この人は優しい人。
本当は誰かを恨んだり、殺めたりできない人。
この人に拳銃なんか握らせたくない。
握らせてはいけない。

もう堂園一茂なんかどうでもいいから。
このままで…