恋ふうせん

私は、智子の背中を見つめながら、ゆっくりホテルの扉に手をかける。

ひんやりと重たい扉が少しずつ開いていく。

ふと、智子がいたずらっぽい表情で振り返った。

「そうそう、ここのホテルでかっこいいボーイさん見つけちゃった。」

私の後ろ髪をふんわりと柔らかい風が抜ける。

その風の向こうを見ると、大きな青空にぽつんと赤いふうせんが一つ。

風に飛ばされて舞い上がっていくのが見えた。

あのふうせんはどこへ行くのかしら?
 
「咲!早くおいでよー。」

扉の向こうで智子が手招きしている。

「うん。」

私は扉越しに、智子に小さく微笑んだ。