授業がすべて終わり、

体育祭の準備の時間になった。

よし。頼まれたインク持ってこないとな。

インクは美術室に置いてあるので、

私はそこへ向かって歩いた。

美術室はあまり行かないので、

少し新鮮な感じがするが、

雰囲気があって、

不思議さを感じた。

美術室の鍵が開いており、

誰かいるのかもしれないと思い、

静かに入っていった。

「失礼します……

インクを取りに来ましたー………」

入ると、誰もいなかった。

でも、鍵開いてたし、

誰かいないのかな。

鍵をかけ忘れた?

まぁいっか。

私は、美術室の端の方に並んでいるインクを見つけた。

「あった!

何色がいるかな…」

いろんな色がある。

種類が多くて、

何色を持っていけばいいのか分からなくなった。

ちゃんと聞けばよかった…。

「えっと……本当に分からないな……

どれだろう………」

「白、赤、黄色、黒。

白は多めがいいな。」

私が悩んでいると、

後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

振り返ると、そこには見覚えのある背の高い男子が立っていた。

「え?渚……?」

「七海に聞いてきた。

夏がどこにいるのか。何色がいるのかもね。」

「まさか、鍵開けたのも…」

「俺だよ。

早めに来てビックリさせようって思ってね。」

私は驚きだった。

渚は笑って話した。

「結構量あるし、俺も持ってくの手伝うよ。」

「ありがとう。

てかさ、

なんで私のこと探してたの?」

渚が私を探す理由があるのか。

ゲームのことしか思いつかない。

今日のクエストの事かな。

イベント情報でも手に入れた?

でもそれを今言う?

「えっと……

きょ……今日さ!

一緒にクエスト行けなくて!

それをみんなに伝えてほしかっただけ!」

「なんで今なの?

もう帰っちゃうとか?」

「いや……別にそうじゃないけど……」

「え?

はっきりしてよ!」

いつもと違う渚の態度が、

少しイラつきが出てきた。

「夏と!

いろんな話したかった…………だけで………………

ごめん!何にもない!

忘れて!」

渚は私に背を向け、座り込んだ。

なんか、教室の時と全然性格が違うな。

もっと……こう……………

俺様?的な?

そんなイメージだったのに。

「いろんな話ね……

それってゲームの話?

それ以外?」

座り込んだ渚に、

私はインクを入れながら聞いてみた。

「ゲームでも、

それ以外でも、

何でもいい。」

「それさ。

何でもいいって言われて困るヤツだから。」

「ごごごごめん!

いや。

夏といると気が休まるからさ。」

「え?

なんで?」

私といると?

なんでよりによって私なんだろう。

「俺、みんなの前では、

あんまり俺と関われないように振舞って、

秘密を隠してきた。」

そんな秘密の隠し方をしてたのか……

「だから。

秘密共有してる夏といると、

安心するって言うか…

その、みんなの前だと疲れるから。」

なるほどね。

そりゃ気が休まるところ作らないとやっていけないよね。

「じゃあ、渚。

これ持って。

教室戻るよ。」

私は、インクを入れた容器を2つ渡した。

「え?

もう戻るの?」

「これ以上いたら、

みんなに迷惑かかるでしょ?」