「ふう……」



 一人になった保健室で小さく息を吐く。昨日夜遅くまで起きていたのがいけなかったか、今頃になって眠くなってきた。

 …………あーだめだ。少し眠ってから帰ろう。壁掛け時計を見ると時刻は十六時過ぎ。三十分くらいなら大丈夫か。

 両耳にイヤホンをはめ、スマホの音楽アプリを起動する。聞きたい曲は決まっているから、指で画面をスライドしながらそれを探して、曲を選択、再生をタップした。

 間もなくしてイヤホンからピアノの旋律が流れ込んでくる。音楽はバラード調で、低音ボイス系の中性的な声が聞こえていた。

 ……何度聞いてもきれいな声。透き通るようなその声は自然と胸の奥に染み込んで、なんだか癒やされる。あたしもいつかきっと、彼のような詩をかきたい。…………ん、でもなんかこれ……



「音が遠い……?」



 画面を連タップして音量をマックスにするけどあまり変わらなかった。……バクかな。まあいいや。

 ぼす、とソファに横になると、睡魔はすぐにあたしの意識を奪いにやってきた。