……双葉ちゃんが保健室を出てから一分かそれくらい経ったころ、ガラリと扉が開く音がした。
「あれ……双葉ちゃん早かったね」
声をかけてみたものの返事はなく、ハアハアと荒い息が響いているだけ。不審に思って入り口のほうを振り向くと、見覚えのある男子が立っていた。
「げっ」
思わず眉を顰めると、逆に彼も顔を顰めてあたしを睨んできた。なんだ人の部屋にノックもなしに! いや今のは冗談ですごめんなさい。
「……っ」
彼は息を切らしたまま廊下の方を振り返った。……様子がおかしい。まるで誰かに追われてるみたいな。
「どうかし……ッ……!?」
「悪い」
思い切って声をかけた途端、彼はそう早口で言うと扉をしめてあたしに駆け寄ってきた。そのままぐいと手首を掴まれ、部屋の隅へ引っ張られる。
「ちょっ……なにッ……?!」
振り払おうとすると彼はあたしの手首をさらに強く握った。痛い痛いッ折れるからッ!!
涙目なあたしにお構いなしに彼はベットと壁の狭い隙間に体を滑り込ませると、またあたしの手首をぐんっと引っ張る。
「ぅあっ……?!」
ぐらりと前によろけ、あたしはその彼の胸に飛び込む形で倒れ込んだ。
……そして気が付くとすぐ鼻先に彼の顔。咄嗟に離れようとするもあたしの腰は彼の腕によってがっちりホールドされてるため動けない。
「……へ、…………」
あの……、これどういう状況ですか。