鏡の中の男が理由までしっかり伝えてくれたので、女はなにも男に聞き返さず名を告げることにした。

「ジェニーよ。ワタシはジェニー・スウィングス。」

鏡の中の男は女の名前を聞くと、一人満足そうにうなずいて鏡の奥の世界へと姿を消していく。

「ちょっと待ってよ。」

鏡の奥の世界へ声が届くようにそう叫んだジェニーの声が男の動きを止めた。

「どうした、ジェニー」

「本当に叶えてくれるの?」

ジェニーは男のことをまだ信用しきれていなかった。不敵な笑みで笑い出す男、しかも現れるのは鏡の中だ。そんな男のことを簡単に信用できない。

「当然だ。さっきも申しただろう?汝の心は我の好きな色をしている。だから汝の望みを叶えるのだ。」

今度は優しく微笑んだ男。その笑顔からは、本当にジェニーの心の色が見えていることがわかる。そして、ジェニーの心の色がどんな色なのかわからないけど本当に好きな色だったこともわかった。

だけど、まだ約束をしただけで願いを叶えてもらっていない。

結婚式は明日なのに本当に間に合うのだろうか。

「明日よ?明日、女を醜い姿へ変えなければ意味がないじゃない。」

ただ一瞬の幸せを味わわせては意味がないとジェニーは思っていた。