「ワタシにはアランという6年間お付き合いをしていた恋人がおりました。でも1ヵ月ほど前、アランはワタシ達の住む街に週3回の頻度で現れる女に花束と指輪を渡したんです。その時を境にアランはワタシを避けるようになったんです。きっとあの女にアランは惹かれたんだわ。だって明日はその女とアランの結婚式なのだから。」

女はそう言うと鏡の中の男の前で泣き崩れる。

鏡の中の男は泣き崩れた女にそっと囁いた。

「汝の心は我の好きな色をしている。汝は我に何を願う?アランとやらと女を引き離したいか。それとも…」

鏡の中の男は言葉の途中で吹き出してしまう。

不思議と鏡の中の男が笑えば女の涙は止まっていて、

鏡の中の男の真意が全くつかめない女はどうしていいのかわからずその場に立ち尽くすしかなかった。

「悪い悪い。汝の望みを叶えるいい魔法を思いついたのだ。まだ、汝の望みを聞いてないのだがな。」

女は鏡の中の男の瞳をただじっと見つめて言った。

「ワタシの望みは…。どんな手を使ってもいい。あの女を殺してほしいの。」

女がそう言うと鏡の中の男はおかしそうにまた笑い出す。

「やっぱり人間はつまらないな。なあ、指輪の女に不死身の命を与えてみないか?指輪の女は沢山の人間の死を見て生きるのだ。そして、指輪の女はどんな辛いことがあっても命を経つことはできない。」

女は鏡の中の男が言うことが全くわからなかった。なぜ、憎んでいる女を生きさせなければならないのか。