真っ黒な壁に高級そうなアンティークのテーブル。その上にはバナナやリンゴなどの果実が置かれている。


テーブルの周りには椅子がなん脚も置かれていて、以前この部屋にいた者が大勢でよく集まっていたことがわかる。


そして、その部屋には古びたもう姿を確認することすらできないような鏡が置かれている。


その部屋にはベッドなど、日常で使うような家具は置かれていなく、多分パーティをするための部屋だ。


今はもう蜘蛛や野良猫たちの住処となり、人の出入りは見られないのだがこの日は不思議なことにその部屋を訪れる者がいた。


その日部屋を訪れたのは、ゴシックな紫色のドレスに身を包んだ金髪の女だった。

女は部屋に入るなり、真っ黒な壁を思い切り叩いて荒げた声で叫んだ。


「ねぇ、誰かいないの？」


その部屋には誰も近寄るわけがなければ、いるわけもない。いたとすると、その部屋に近寄るのも出入りをするのもその女くらいだ。

女は人の気配がないことを察すると、テーブルの上に置かれていたオレンジを床に思い切り叩きつけて部屋から退出しようとした。