会場を出てすぐ私が探していた姿があった。



壁に背中を預けている姿に何故かドキッとした。



私の足音に気づいた妃波くんは背中を起こして私の方へ体を向けた。



「お疲れ様、3位おめでとう。…ってどうしたの?そんなに慌てて」

「へ!?あ、ううん!ありがと!」



どうしたんだろう私。



妃波くんにおめでとうって言われただけで、こんなにも嬉しいなんて。



自分がどうしてしまったのか考えていれば、手に持っていたタオルをとられていきなりポタポタと雫が垂れている髪を優しく拭かれた。



「え!ちょ、妃波くん!?」

「濡れたままじゃ風邪ひくよ?
待ってるから着替えてきなよ」

「う、うん!」



すぐ近くにあった更衣室に駆け込んで、ドアを閉めた。



自分のロッカーにたどり着くと力が抜けてその場に座り込んだ。



今泳いできて髪も体も冷えきっているはずなのにどうして。



どうしてこんなにも触られた髪が熱いんだろう。



しばらくそのままの格好で熱を冷ましてから急いで着替えて、妃波くんと一緒に待っているであろう美織と楓月くんのところへと向かった。