「だって、裕のやつ……」
「うっせぇ、そのあとの言葉言ったらぶん殴る」
「わ、怖っ」
今度、そんなふたりのやり取りを見て笑うのは私の方だった。
「本当に裕くんと妃波くん、仲良しなんだね?」
「美織ちゃんってさ、鈍感だね」
「え?」
私の質問に帰ってきたのは、全然違った回答で、困惑する。
私が、鈍感?
どこを見てそう思ったんだろう。
「昔からだよ、美織は」
「なっ、裕くんの方が鈍感なんだからっ」
私の気持ちなんて、何も知らないくせに。
私なんかより、裕くんの方がよっぽど鈍感だよ。
「ふーん、そういう事ね」
「?」
何やら、納得した様子の妃波くん。
パズルのピースがはまったかのような表情を浮かべている。
「ちょっとトイレ行ってくるわ」
「あ、うん」
「行ってらっしゃい」
意味深な言葉を残して、妃波くんは席を立って行ってしまった。



