それから裕くんと別れて、午後の授業がある私たちは普通科の棟へと戻った。



「とりあえず渡してもらえそうでよかったね」

「うん」

「ところでさ、美織!楓月くんのこと、教えなさいよー」



戻ってきてからの私は、もう頭の中がごちゃごちゃで……



生徒手帳を渡すことができた安心感。



でもそれよりも、なんで裕くんがいるのか。



なんで何も言ってくれなかったのか。



なんで裕くんは、何にもなかったように私に話しかけてくるのか。



あの日……



なんで勝手に遠くへ行ってしまったのか。



裕くんが引っ越した、それを聞いたのは、裕くんがこの街を離れた後だった。



どうして、裕くん。



どうして……



「ちょっと、ヒトの話聞いてる?」



一葉ちゃんからの言葉は、全然頭に入ってこなくて。



その日の残りの授業も、当然耳に入るわけもなく、ずっとうわの空だった。