無事に退院し、家に帰るとき、クリスマスの装飾が施された大きなツリーを目にした。
入院していた時は、季節を、見舞い客の服装と、外気の温度で感じるしかなかったが、すっかり枯れ木になった街路樹を見て、改めて、冬になったのだと感じた。


「ただいま」

お店の引き戸を開けて、中に向かって言う。返ってくる言葉はない。
閉めていたのだから、誰もいるわけがないけれど、自分が慣れ親しんだ場所に帰って来た実感が得たかった。


さて、これからどうしようか。

さくらのことを思い出すのはこの際、置いといて、共同経営者としてやっていこうか。しかも、自分の好みのタイプであるのだから問題はない。その人が妻と言ってくれているなら、嫌な気分はしない。


「いつ再開するの?」さくらが訊ねる。
「年明けかな。料理の腕も不安だし、お店の広告をどっかに頼みたいし」
「そうか、広告がいるんだった。」
「広告は手書きで行こう。印刷代は2000部くらいで6000円か7000円くらいだな」
「近所に配るよりネットで告知の方が早くない?」
「ネットを使っていない方だっているんだから」
「確かにそうだね!」
「来月の頭にオープンしよう!」
こうして復帰の目処がたった。